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そんなわたしに対して男は止めるでもなく、冷ややかな態度のまま反応を示さない。
何よ……ムカつく。
文句の1つでも言ってやろうと思って唇を離すと、男が初めて口を開いた。
「キミ、誰?」
冷めきった低い声と、軽蔑するような視線。
普段なら男の方から仕掛けてくるのを待つわたしが、まさかこんな公衆の面前で欲情しちゃうなんて。
ありえない。
こんなに心を奪われた男なんて、過去にいたっけ?
「お願い……私を抱いて……」
文句を言うはずだったわたしの口は、なぜか突拍子も無い言葉を吐き出した。
さすがに男も一瞬驚いたように目を見開いている。
ヤバイ……どうしよう?
だけど、予想に反して彼は短く鼻で笑うと無言のままわたしの手を取って、ホテル街のある北口へ歩き出した。
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