第1章:マオ【因果応報】

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そんなわたしに対して男は止めるでもなく、冷ややかな態度のまま反応を示さない。 何よ……ムカつく。 文句の1つでも言ってやろうと思って唇を離すと、男が初めて口を開いた。 「キミ、誰?」 冷めきった低い声と、軽蔑するような視線。 普段なら男の方から仕掛けてくるのを待つわたしが、まさかこんな公衆の面前で欲情しちゃうなんて。 ありえない。 こんなに心を奪われた男なんて、過去にいたっけ? 「お願い……私を抱いて……」 文句を言うはずだったわたしの口は、なぜか突拍子も無い言葉を吐き出した。 さすがに男も一瞬驚いたように目を見開いている。 ヤバイ……どうしよう? だけど、予想に反して彼は短く鼻で笑うと無言のままわたしの手を取って、ホテル街のある北口へ歩き出した。
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