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あれは確か、私が5歳になったばかりの時。
「毎日これをやりなさい」
威圧的な口調で突然渡されたのは、ひらがなとカタカナのワークブック。
「ただ書けるだけじゃ、ダメ。良い? お手本の通りに、きれいな文字を書くの。うちは母子家庭なんだから、ちゃんとしてないと周りからバカにされるのよ」
《うちは母子家庭なんだから》
お母さんの口から出るこのセリフを一体、何回聞いただろう。
もう、耳タコだった。
だけど、幼い私に拒否権なんてない。
小学校に入るまでの約2年間、お母さんが仕事に行っている間にやることは遊ぶことじゃなくて、ひたすら文字の書き取りと勉強だけだった。
あとになって気付いたけど、彼女はとてもプライドが高くて、人からバカにされることを極端に嫌う性格だったんだ。
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