第4章:ユリ【臥薪嘗胆】

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実は入学式の日にお母さんがヒステリーを起こしたのも、ある夫婦にバカにされたことが原因だった。 式が終わって私達が校庭の桜をバックに集合写真を撮っている間、保護者は端で待機していた。 その時、偶然隣に居た下村夫妻がお母さんに 「せっかくの子供の晴れ舞台なのに、ご主人はいらしてないんですか?」 と余計な言葉をかけたらしい。 全くもって大きなお世話だと思うけど、私が子供の頃はまだ母子家庭は少なくて、冷ややかな視線を浴びることは珍しくなかった。 キレイな字を書くこと。 常に礼儀正しく、周りの大人に気に入られること。 とりあえずこの2つを守っていれば、自分が傷付くことはなかった、歪んだ幼少時代。 それは、次第に崩れていった……。
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