第4章:ユリ【臥薪嘗胆】

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「鮫島(サメジマ)って、生きてて楽しい?」 まだ入学式から3日しか経っていなかった。 それなのに、同じクラスの影野 康仁(カゲノ ヤスヒト)は放課後の教室で、突然私にその言葉を投げかけた。 「えっ……どういう意味?」 「言葉のままだよ。キミ、誰にも本心を見せてないだろ」 まっすぐ見つめてくるダークブラウンの瞳に全て見透かされているみたいで、私は思わず窓の外へ目線をそらした。 開花が遅かった校庭の桜は、まだ綺麗に色付いている。 「ああ、ゴメン。別に責めているわけじゃないんだ。僕も同じ片親だから、キミと話してみたくて……」 えっ!? 思いがけない言葉に、顔が自然と彼の方へ向き直っていた。
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