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「鮫島とは逆の父子家庭だけどね」
「ちょっと待って……。なんでうちが、母子家庭って知ってるの?」
「悪いとは思ったんだけど……。入学式の時、新入生代表の挨拶をしているキミの姿を見て、何となく僕と似た雰囲気を感じたから担任に聞いたんだ」
なんで勝手に人の家庭のこと聞いてんのよ。
正直、あまり母子家庭であることは同級生に知られたくなかった。
大抵、どうしてそうなったのか、理由を聞かれるから。
だけど、彼が投げかけた質問は少し違っていた。
「鮫島はさ、お父さんの顔って覚えてる?」
「ううん、覚えてない……。両親が離婚したのは、私が1歳の頃だったから」
「そっか、一緒だね。僕も母親の顔は知らないんだ」
さっきまでの鋭い視線がウソのように柔らかくなり、彼は苦く笑った。
《似た環境で育った親近感》だったのかもしれない。
ただ、あまり異性に対して良い印象を持ったことがない私にとって、その笑顔は特別だった。
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