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週一~二のペースで、編集の金子さんが打ち合わせに来る。
大抵の場合はアシスタントさんが数人いるのだけど、その日はアシスタントさんはいなかった。
コーヒーを淹れて、仕事場で打ち合わせしてる二人に届けようとした。
今田さんはなんでもピタリと閉めない悪いクセがあって、この日も仕事場の扉が少し開いていた。
すると、扉の向こうから聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。
「性の解放ですよ!」
金子さんが今田さんに説いてるようにも聞こえた。
「好きな人がいるでしょう?」
俺は、はっとした。
俺と今田さんは出会ってまだ間もない。
けれど、俺は一つ屋根の下にいることで勝手に今田さんを知った気になっていた。
金子さんが今田さんをからかっている笑い声。
顔を赤くして照れている今田さんは、見たことのない顔をしていた。
「は」
俺の中で何か、言いようもない黒い、嫉妬みたいな感情が下腹のあたりからグラグラと湧いて出てきた。
好きな人?
そんな人がいることすら知らない。
童貞だって、処女じゃないかもしれない。
俺は今田さんのこと、何もしらない。
何も、知らないんだ。
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