第1章 魔法大全

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 ──魔法とは、本来ならば才ある者が長い年月をかけて修得する奇跡の力だ  った。しかし今の魔法は違う。  いつからか魔法の理を記した魔導書なる存在が世に登場し、それを魔力を持  つ使用者が読むことで、簡単に魔法を行使できるようになった。世に云う魔  法革命である。  教壇に立つ一人の壮年の男性が、教室に居る生徒たちに魔法の歴史を説いて  いる。  「いいですか皆さん…。魔導書の最初の作成者に関しては諸説ありますが、  カッシェロ・アルバーノが世に広めたというのが現在、最も有力とされる  説です」  教師が窓際に座る一人の少女へと目を向ける。少女は教師が見ていることも  知らずに窓からボンヤリ外を眺めていた。青空にポッカリと浮かぶ白い雲。  それはゆったりと流れており、上空も風の穏やかな様子が窺える。  少女が大きくあくびをする。すると、そこへ壮年の男性教師からの叱責が飛  んだ。 「ナナキさん。 聞いていますか?」  呼ばれた少女はビクリと反応して、教師の立つ教壇へと視線を向けた。そこ  には怒りながらも、どこか呆れたような表情の教師が立っていた。ナナキは  小さく「すみません」と呟く。すると今度は教師が一言ボソリと呟いた。 「そういう不真面目さがいまだに魔導書に選ばれない理由なんじゃないですか?」  その教師の言葉に教室でクスクスと笑いが起こった。ナナキは、その教師の  言葉に俯き、その表情を覆い隠す。教師は溜め息をついて、授業の続きを始  めた。 「魔導書とは読み手の魔力に反応します。魔導書が反応を示すのならば使い手  の得手不得手は有りますが、普通は数十冊程度。最低でも二、三冊は読める  ものです。そして魔法を使うことが出来ます」  そこで俯くナナキの肩がピクリと反応するも、教師はそれには目もくれず  淡々と授業を続けた。
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