19人が本棚に入れています
本棚に追加
/78ページ
――アフシア大陸その中央からやや西側には大きな山脈が南北に連なって
いる。その山脈の頂上に一年中、降り積もる雪は、晴れの日には山へと溶
け出し、それは湧き水となり大きな河へと流れていった。
その大河の流れる山脈の麓にはシューレシュタットと言う大都市が広がって
いて、その中央には大陸の中でも屈指の学園――シューレシュタット魔法学
園の校舎が建っていた。
その魔法学園には様々な研究棟が建っており、そこでは日々魔法という現象
の研究が行われていた。
その魔法学園の魔法科に通う事になったナナキ・レッシュベルは、屈指の魔
力の持ち主として期待されて入学した。――然しそれも一年、二年と年を追
う毎に期待は失望へと変わった。
その理由は三年経った今でも魔導書が読めないことにあった。魔導書とは
読み手の魔力に反応して初めて読めるようになる書物だ。
それが読めないということは、現在の彼女は魔法が使えないことを意味して
いる。故に彼女には不名誉な称号が与えられていた。曰く魔法を使えるよう
に導いてもらえない様を指して『迷子のナナキ』
ナナキはこの日とうとう中傷や憐憫の眼差しに耐えられずに授業を無断で休
み学園の寮から飛び出した。行く宛なんてない。只々逃げ出したかった。魔
法と学園から――
最初のコメントを投稿しよう!