◆ Manabu & Keigo ◆

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◆ Manabu & Keigo ◆

 部屋へと入った瞬間、啓悟は藤堂の背中に抱きついた。突然のそれに、藤堂が驚いたように首だけで振り返る。 「啓悟? どうした」 「んー…、何となく」  嗅ぎ慣れた藤堂の匂いにすんすんと鼻を鳴らし、啓悟は鼻の奥がツンと痛くなるのを自覚する。小刻みに躰が震えそうになるのを必死に堪えたところで、藤堂に隠せはしなかった。 「啓悟、背中じゃなくてこっちへ来い。ほら…」 「ん…」  微かに頷いて藤堂の腕の下をくぐり抜ければ、あっという間に抱き締められる。髪に、額に、口付けられて啓悟の眦にはぷくりと透明な雫が浮かんだ。 「怖かったのか」 「ん…」  素直に頷けば優しく髪を撫でてくれる藤堂に、啓悟はしがみ付く。ともすれば呆れられはしないかと恐る恐る顔を上げた啓悟に、藤堂は触れるだけのキスをした。 「よく頑張ったな。お前が明るく振舞っててくれたおかげで、俺は落ち着いていられた」 「ホント?」 「ああ。お前、俺だってただのサラリーマンだぞ? 怖いに決まってるだろうが」  髪を撫でながらソファへと押しやられた啓悟は、藤堂の膝に抱え上げられて嬉しそうに笑う。いつも大人で落ち着いた態度の年上の恋人に褒められるだけで、ちょっとは役に立ってたのかと啓悟は安心するのだ。  些かならず特殊な環境で生活する友人たちの中で、この二人だけは雇われ社長と若手経営者というごく普通の一般人だった。藤堂の腕の中、改めて無事を確認し、そしてもう騒ぎは終わったのだと実感した啓悟が小さく笑う。 「あんな人数で誘拐しに来るって、やっぱ甲斐さんって王子様とかそんな感じだよなー」 「辰巳との縁も誘拐騒ぎだったと言うくらいだからな」 「マジ!? それって甲斐さんまだ子供じゃないの!?」 「十六だったとフレッドには聞いたが…」  藤堂はフレデリックと、海外留学中に知り合った。今こうして啓悟や甲斐、隼人を交えて交流があるのは偶然の事なのだ。最初、フレデリックの口から日本人と付き合い始めたと聞かされた時は藤堂も喜んだものだが、相手が辰巳だと知って考え直せと言ったのは無論の事である。  正直、藤堂は辰巳とも仕事の縁がありはする。だが、だからこそあまり啓悟には近付いて欲しくはないと、そう思っていた。 「んでも辰巳さん、今でも甲斐さんの事守ってるんだね。なんかさぁ、行くのが当たり前ーみたいな顔しててかっこよかったな」 「……そう、だな」 「ははっ、藤堂は辰巳さんの事好きじゃないもんねー?」  本人を前にして『喧しい親父』と言って憚らない藤堂である事は、もちろん啓悟も知っている。その理由も。 「でもさ、辰巳さん口悪いし怖いけど、もし攫われたのが俺と藤堂だったとしても、きっと助けに来てくれるよ?」 「来た後で散々恩着せがましくされそうだがな」 「あー…藤堂にはやりそう」  ぷくくっ…と、可笑しそうに笑って啓悟は藤堂の胸に凭れ掛かった。見上げながら、甘えるように頬同士をくっつける。僅かにザリザリとする感触に、啓悟はぷっくりと頬を膨らませた。 「ん。藤堂ヒゲ伸びてる」 「そりゃあな」 「いいなぁ…俺全然生えないんだけど…」 「毛深いお前が俺は想像できないが」  言いながら、藤堂はすべすべの啓悟の腹へと手を忍ばせる。ひやりとしたその感触に、首を竦めつつも啓悟に止める気配はなかった。その代わり。 「エロ親父ー」 「エロガキが旨そうな躰でくっついてくるからな。触って欲しいんだろう?」 「うん…」  素直に頷く啓悟の瞳は既にとろりと溶け始めていた。藤堂に触れられていると思うだけで、啓悟は幸せに包まれる。 「キスして…?」  啓悟は首へと回した腕で藤堂にしがみ付いた。藤堂は啓悟に口付けを与え、片手で背中やら脇腹を撫で上げ、片手で器用に服を脱がせていく。あっという間に裸に剥かれた啓悟の頬が、恥ずかしそうに上気する。  小さな水音を響かせながら、啓悟は藤堂の舌を夢中で吸い上げた。 「とぅどぉ…好き…、ん…っ、全部好きぃ…」 「なら、俺も脱がせてくれないか」 「ん…」  名残惜しそうに藤堂の下唇をちゅっと吸い上げて、啓悟が僅かに身を離す。服を脱がせる間も藤堂の指は、いたずらに啓悟の胸の飾りを弄る。本人は抗議のつもりで睨んでいるのだろうが、濡れた瞳で上目遣いなそれは、当然藤堂を煽るだけだった。 「藤堂のエッチ…」 「旨そうな躰をしてるお前が悪い。こんなに尖らせて、弄って欲しくて仕方ないんだろ?」 「今はダメ…ぇ」  涙目で訴えながら、ついに手を止めた啓悟の眦へと藤堂が口付ける。 「泣くなよ啓悟、余計に泣かせたくなる」 「意地悪い…っ」 「意地悪されても強請る淫乱なガキは誰だ?」 「俺…そんなんじゃな…いっんッ」  きゅっと乳首を藤堂の指先が摘み上げて、啓悟の口からは嬌声が零れ落ちた。腰を抱いてソファの上へと押し倒し、藤堂は脱がされかけたシャツも上着も脱ぎ捨てると、ぷくりと尖った小さな飾りを口に含んだ。 「あっ…ん、と…どぉ…っ」  もっと…と、そう強請らんばかりに啓悟の胸が反りあがる。胸を舐られ、下肢を太腿で擦り上げられて、啓悟は艶やかな声をあげた。 「啓悟、場所を変わってくれないか」 「ぅ…?」  言うなり藤堂は啓悟の躰を抱え上げ、ソファへと寝そべった。突然藤堂の上に乗せられた啓悟が目を瞬かせる。 「俺の顔、跨いで口でして?」 「ん…」  顔を真っ赤にしながらも啓悟はゆっくりと藤堂の上で顔を跨いだ。薄い下生えを指で擽るように弄られて、意識せずとも啓悟の雄芯が僅かに震える。ベルトを外され、引き下げられたファスナーから覗く下着のふくらみに、啓悟はそっと指を這わせた。 「藤堂の……硬い…」 「当たり前だろう」 「ん…嬉しぃ……」  自分の下で藤堂が些か苦し気な顔をしている事などつゆ知らず、啓悟は嬉しそうに下着を窮屈そうに持ち上げる雄芯を撫でる。大好きな藤堂の熱棒を下着の上からあむあむと唇で食み、啓悟は一生懸命に刺激した。…のだが。  小さな溜息とともに伸びた藤堂の手が自ら下着を引き摺り降ろし、勢いよく顔を覗かせた屹立が啓悟の顔を直撃する。 「あぅ…っ」 「奥まで飲み込め」 「ん…口に出してもいいよ…?」  藤堂の上に身を預け、両手で雄芯を支えながら舌先を先端に這わせて啓悟が囁く。まるで大事なものを綺麗にするように、啓悟は藤堂のそれへと奉仕した。後孔を藤堂の舌で舐られ、指を飲み込まされて啓悟の躰がふるりと震える。  そう時間をかけることなく啓悟は藤堂の雄芯をただ握り締め、下生えへと顔を埋めるだけになった。 「ひぅ…っ、あっ、とぅどっ、そこ…ッ、やだぁ」  長い指が後孔を指で広げ、媚肉を藤堂の舌が直接舐る。放置された啓悟の雄芯から、藤堂の胸へと透明な雫が糸を引いた。 「何が嫌なんだ? 今にもイきそうなくせに我儘な奴だな」 「指やだ…っ、藤堂のがいいッ」  ぐずぐずと駄々をこねるように言う啓悟に、藤堂はあっさりと指を引き抜いた。 「ほら、欲しいって言うなら自分で挿れてみせろよ啓悟」 「うぅ…」  のろのろと態勢を入れ替えて、啓悟は藤堂の腰を跨いだ。片手を添えた熱棒を自らの蕾に宛がう。 「ぁ…」  丁寧に解された肉の襞が物欲しそうにひくりと震え、啓悟は小さな吐息を漏らした。僅かに触れた粘膜からじわりじわりと躰中に快感が広がっていく。  ピタリと動きを止めた啓悟に、藤堂が低く笑う。 「どうした? 早くお前の中に入らせろ」 「挿れ…て…? 藤堂に…挿れられたぃ…」  ふっ…と、藤堂が男らしい笑みを浮かべた次の瞬間、啓悟の躰が大きく跳ねた。腰を掴まれ、一気に最奥まで穿たれて、衝撃に全身が強張る。 「んぁああああっ! あっ、とっどぉ…のッ、おっきぃ…っ」 「ッ……このエロガキ…」 「んっ、良いッ、…エロガキで…いいからっ、もっとシテ…ぇっ」  強請る啓悟に煽られて、身を起こした藤堂が恋人の躰を解放したのは陽も昇ろうかという時間の事だった。
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