◆ Michael & Christopher ◆

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◆ Michael & Christopher ◆

 部屋へと入った途端に届けられていた荷物を漁りだすクリストファーを横目に、マイケルはカウンターでコーヒーメーカーをセットした。未だ荷物を漁っているクリストファーを振り返る。 「何をしてるんだ?」 「いや、すぐに済む」  上の空に言うクリストファーにむっとしたマイケルは、そろりと恋人の背後へと近付いた。が。 「ちゃんと相手はしてやるから大人しくしていろ」  あっさりと見抜かれた挙句に子供扱いでもするかのような台詞が返ってきただけだった。 「お前は俺を何だと思ってるんだクリス…」 「可愛い恋人だと思ってるよ。…ほらっ」 「…っ」  立ち上がり、振り向きざまに放り投げられたものを、マイケルは慌ててキャッチした。いったい何だと掴んだばかりのそれを見れば、深紅の箱にシルバーのリボンがかけられている。 「え?」 「クリスマスプレゼントだろ。何を驚いてる?」  小首を傾げながらクリストファーはそう言って、あっさりとマイケルの横をすり抜けていく。すり抜けざまに頭をぽんぽんと叩いていくあたりがもう、マイケルには堪らなく恥ずかしいのだが。顔に熱が集中するのを自覚しつつ振り返れば、クリストファーの背中は壁の奥に消えるところだった。  マイケルの視線が、手の中の小箱とクリストファーの消えた空間を行き来する。  ―――開けていいのか?  プレゼントだというのだから開けてもいいだろうと思いはするものの、当のクリストファーがその場にいない事がマイケルには少々…いや、かなり切ない。  結局マイケルはローテーブルの上にリボンがかかったままの小箱をそっと置いて、クリストファーを追いかけた。  既に脱衣場にクリストファーの姿はない。丁寧でもなく雑でもなく、脱いだ服が置かれているのがクリストファーらしく、マイケルは小さな笑みを零す。 「プレゼント…選ぶのなんて御免だって言ってたくせに…」  ドアを開け、けぶった湯気の中大きな傷跡を背負う背中にマイケルがそう言ってやれば、クリストファーの肩が小さく揺れる。 「言葉が足りなかったな。お前以外に選ぶのなんて御免だミシェル」 「っ……」  こういうところが誑しなんだとそう思いはするものの、振り向き、クリストファーに腕を広げられればついふらふらと寄って行ってしまうのがマイケルな訳で。あっという間に腕をとられ、引き寄せられる。 「どうした。顔が赤いぞ?」 「お前のせいだバカ」 「そんなに可愛い顔をされると、今すぐお前が欲しくなる」  耳元に囁くクリストファーの声は低く、壮絶な色香を纏ってマイケルの鼓膜を震わせる。 「くっ、くれてやるから…後ろを向いてろ…」  顔を真っ赤にして言うマイケルに、クリストファーは一瞬驚いたような顔をして、だが素直に後ろを向いた。ついでのように壁に手をついたクリストファーの、楽しげな声が浴室に響く。 「さあ、どうしてくれるんだミシェル?」 「……うぅ…、し…尻を出してみろ…」 「くくっ、随分可愛らしい命令もあったものだ」  可笑しそうに言いながら、一度振り向いたクリストファーがマイケルの唇を奪う。くちゅりと舌を絡ませてすぐに離れるそれに物足りなさを感じていれば、しなやかに躰を折り曲げてクリストファーは浴槽の縁に片手をついた。もう片方の指が、自らの後孔へと伸びる。 「ミシェル…ここに、お前が欲しい」  脚を開き、中心の媚肉を自ら広げるクリストファーの媚態に息を呑む。思わずむしゃぶりつきたくなるほど魅力的なその体勢に、マイケルはごくりと唾を飲み込んだ。クリストファー自身の指が添えられた蕾に雄芯をあてがう。  腰を掴んだマイケルが、ゆっくりと腰を押し進めるのに合わせてクリストファーの口からは吐息が漏れた。 「クリス…っ、気持ち良い…?」 「あぁ…最高だミシェル…。…もっと寄越せ」 「んっ、なら…遠慮しない…ッ、からなッ」  雄芯が抜け落ちそうなほど腰を引いては一気に最奥を突きあげる。その度にクリストファーの艶やかな声が反響してマイケルの情欲を煽り立てた。 「は…ぁっ、イイッ…」  撓るクリストファーの背中が艶めかしくて、マイケルは夢中になって目の前の獲物を貪った。傷跡に指を這わせるたびにクリストファーが頭を振って、食んだ雄芯を締め付ける。 「あッ…ぁっ、触…っ、な…」 「クリスのここは、そう言ってない…」  屹立を深く突き立てたまま、マイケルがぐるりと腰をグラインドさせる。両手をついて仰け反るクリストファーが、息を吐いては堪えるように大きく胸を喘がせた。 「い…いっ、…気持ちがイイッ、ミシェル…もっとッ」 「うん。俺も気持ち良い…。もっと…気持ち良くなって?」  ゆるりと背中を撫でていた手を前へと回し、マイケルはクリストファーの雄芯に指を絡ませる。先端に指を滑らせれば透明な雫が糸を引く。くちりと、微かな水音を後孔から洩れる破裂音が掻き消した。 「クリス…っ、クリスぅ!」  愛おしくて堪らない恋人の躰をマイケルの腕が抱き締める。最奥の壁を抉られ、屹立を擦り上げられて、クリストファーの腰が引き締まる。 「アッ…、アアッ、イ…ィッ、ミシェ…ルッ。……っん、…ンンッ!!」  クリストファーの全身が強張ったかと思えばマイケルの手の中の雄芯がぐっと膨らんで、ぼたぼたと白濁が指の隙間から滴り落ちた。濡れたその感触と、急激に締め付ける中の媚肉にマイケルはきつく眉根を寄せる。ともすれば今すぐに吐き出しそうになるのを寸でのところで堪え切る。 「ッ……ぅ、クリ…ス、まだ……、もっと…イけよッ」  マイケルは抱き締めていた腕を離し、目の前の腰を手荒に掴んで揺すり上げた。 「アアァ…! っぐ、ンッ、良いッ、気持ちイ…ッぁ、アァ…ッ」  浴室に響くクリストファーの声がひときわ高くなり、これ以上ないほどの艶を纏う。吐き出す最中から収縮する媚肉を抉られ、クリストファーは突き上げられるたびに白濁を溢れさせた。 「アッ、…はっ、最高だ…ミシェルッ、お前にっ、満たされたい…ッ」 「んっ…もぅ…イき…そ、クリスッ」  これ以上ないほど奥まで腰を打ち付けてマイケルが息を詰める。気を抜けばくたりと座り込みそうになるのをどうにか堪えながら雄芯を引き抜けば、くぱりと開いたままの蕾から白濁が僅かに滴り落ちた。  卑猥さに目を奪われているマイケルの耳に、揶揄うような声音が流れ込む。 「他にご命令は?」 「っ…バカ」 「人がせっかく言う事を聞いてやろうってのに、酷い言い草だな」  それまでの行為などなかったかのような身軽さで立ち上がり、自身の躰は愚かマイケルの髪まで洗い始めるクリストファーである。『座れ』と、それまでクリストファーが手をついていた浴槽を示され、マイケルは大人しく従った。というよりも、慣れない態勢で致したおかげで立っているのも辛かったのだ。 「クリス…」 「情けない声を出すなよミシェル。虐めたくなる」  くくっ…と短く喉を鳴らすクリストファーに髪を洗われ、躰を洗われ、腰を抱かれたまま浴室から出れば水気を拭われ、まさしく至れり尽くせりにマイケルは世話を焼かれる。部屋に備えつけのバスローブまでをも着せかけられてしまっては、マイケルもはにかむしかない。 「そんなに甲斐甲斐しく世話を焼かなくてもいいだろう…?」 「頑張った時に甘やかしておけば、お前は甘やかされたくて次も頑張るかと思ってな」 「どうしてお前はそういうところにしか目がいかないんだ…!」 「はん? セックスが好きだからに決まってるだろう。今更何を言ってる」  まるでその為に優しくしてやっているのだと言わんばかりのクリストファーの態度に、マイケルが不満を覚えないはずはなかった。丁寧に髪まで拭っているクリストファーの手からタオルを奪い取る。  わしわしと手荒に髪を拭い始めるマイケルに、クリストファーは肩を竦めるだけだ。 「そう怒るなよミシェル?」 「お前などもう知らんっ」  ふいと顔を背けるマイケルに苦笑を漏らし、だがクリストファーは後ろからその躰を抱き締めて耳元に囁いた。 「お前の為に選んだプレゼントは、開けてくれないのか?」 「…ッ」  ソファの背もたれを乗り越えたクリストファーに、マイケルはあっという間に背中から抱きかかえられていた。器用に背後から手を伸ばし、マイケルがローテーブルに置いた小箱を取り上げる。もう片方の手でマイケルの手をとり上げると、クリストファーはそっと小箱を握らせた。 「Buon Natale. Michael」 「っ…お前は狡い!」 「優しくしてやってるのにどうして怒られるんだ?」  困った奴だとそう言いながら耳朶を甘噛みするクリストファーに、マイケルが勝てる筈もなく。顔を真っ赤にして俯いた視線の先には深紅の小箱。いったい中身は何だろうかと戸惑っていれば、今度はもう片方の手まで握られる。  僅かに視線をずらせば腕の横から覗き込むようにするクリストファーがいて、マイケルはどうにも恥ずかしくて仕方がないのだ。  シルバーのリボンを取り払い、赤い包装紙を剥ぎ取れば中からは跳ね上げ式の蓋がついた箱が顔を覗かせる。ぱかりと開けてみれば、文字盤に小さなコンパスが配置された腕時計がひとつ納められていた。 「クリス…これ…」  それは、以前フレデリックが時計を新調した…というよりも、辰巳に買ってもらったのだと見せびらかせに来た際に何となく話し込み、マイケルが好きだと話したブランドのものだった。 「お気に召して頂けましたか、ミシェル王子?」 「っ……バカ…」 「本当にお前は素直じゃないな」  困ったように笑いながら、それでもクリストファーの手は愛し気にこげ茶の髪を撫でる。  翌日、白い制服を纏ったマイケルの腕に、しっかりとその時計が嵌められていた事は言うまでもない。
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