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冷んやりとした空気、見たことも無いモンスターが大勢、初めて上京した田舎者のように色々な装飾に目を取られながら僕達は逸れないように神殿内を歩いた。
かなり歩いただろうか、真っ直ぐ歩いて行くと、大きな階段があり、豪華な装飾がある。
階段を登ると、大きな机があり、そこに座る年老いて眼鏡をかけた小柄なモンスター神官がここに来た訳を聞いてきた。
「転職の本を譲ってもらいたいのですが」
「では、なぜ転職を望まれるのかな? オオクワガタアントさん」
「ドラゴンになって、勇者を殺して魔王様の役に立ちたいんです」
「分かりました、では、はっきり言わせてもらうが......」
老いたモンスター神官は、一呼吸して話し出した
「お前さんはレベル一ですな、そのレベルでは、ドラゴンにはなれん、転職するにはレベル二十以上が必要じゃ」
僕は心臓を射抜かれたような衝撃をうけた。周りの皆んなの目も大きく開き、口を開けて驚く。
「そ、そんな......」
ここまで来て、何もできずに帰るのか......肩を落として俯き、振り返る。
あまりにもの落胆ぶりを見かねて、老神官は「待ちなさい」と苦し紛れに僕達を止めた。
「出来ない事が無いわけじゃない、レベル一のお前さん達が、二十匹同時に転職すりゃ、一匹のドラゴンになることができるじゃろう、ただし代表の一匹以外は死ぬ事になるがな......」
「117、この命お前に預けるよ、勇者を殺したらまた元に戻ればいいだけのことだろ?」
「な?」と老神官に同意を求める、ナンバー83。
老神官はゆっくりと頷く、皆んなの顔の緊張が緩む。
僕達は、持って来たゴールドの内、二十匹分を渡し、【転職の本】を受け取った、その中には僕達十匹の名前を書き、儀式をしてもらった。
巣に帰って残りの十匹の名前を書き加えると二十四時間後、ドラゴンへの変身が始まるとの事。
神殿からの帰り道、我ながら完璧な計画を立てた喜びに満ち溢れていた、ドラゴンに転職し、勇者を殺した後、クワガタアントに再転職すれば、元の生活に戻れる、勇者もいなくなる。最高だ――――
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