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「おや、今朝は白湯ではないのですね」
同僚に言われて早矢兎は顔を上げた。手元には久し振りに淹れた緑茶の湯呑があった。
「それに心なしか隈も薄い、婚約者殿に慰めてもらったのかな?」
同じ年にここで働き始めた赤坂が顔を覗き込みながら揶揄う。
「なっ、南欧子さんとは何もありませんよ。そもそもその様な時間などない事は貴方もご存知でしょう」
事情は全て分かっている、とでも言いたそうな表情を浮かべ彼は軽く鼻を鳴らした。
「全くだね」
しかし考えてみると胃の腑の辺りがいつもより軽い。毎朝無理矢理掻き込んでいる朝餉も滑らかに喉を通り、一緒に食卓を囲んだ母親にも「おや、結構な食欲だこと」と驚かれたのだった。たかが飴と思っていたがそのお陰と言うなら大したものだ。
明日は一番厄介な教授が学会の為に不在となる為定時前に帰る事ができそうだ。お礼がてら店を訪ねてみようか。何よりあの青年の眼差しが脳裏に焼き付いてどうにも気になって仕方ないのだ。
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「そんなに効果がありましたか、いやはやお身体に合った様で何よりです」
まるで他人事の様に老人は言った。
「所で暑くお感じになる事はありませんでしたか?」
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