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使用人のレナが、今朝は珍しく髪飾りを付けていた。
「彼からのプレゼントなんです」
「誕生日の贈り物?」
「違いますよ、ユリィ様。今日は祝祭日です。王国の祖である女神様が降誕された日ですよ」
「ああ、そうか。そういえば殿下がそんなこと言ってたわね」
「特別な日なので親しい人と贈り物を交わしたり、私のような下働きの者も今日は王宮でお洒落できる日なんです。ユリィ様ももっと着飾ってくださいませ」
「私はいいわ。誰にも会わないもの」
「ゼスク様が来られるかもしれませんよ」
「殿下は地方の視察が忙しくてしばらく会えないと言ってたわ。それよりレナ、今日は仕事を休んで彼氏と会ってきなさいよ」
「でも……」
「私から休暇のプレゼント。楽しんできて」
王城の敷地内とはいえ離宮で暮らす魔女の使用人に選ばれたというのに。
レナは毎日明るく接してくれる気立ての良い娘だった。
そんな彼女に何か少しでもお礼ができたらと常々思っていたのだ。
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