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かつては賑わっていたであろうが、今はすっかり朽ち果てた、映画館の廊下、青年が複数いるらしい眷属から必死に逃げていた。
眷属はあのクモのような眷属と同じ型だが、どういうわけかこの眷属は、足音をガシャンガシャンと立てている。
青年の容姿は20代半ば、パッチリして大きめだが鋭い琥珀色の瞳、ウルフカットに似た濃紺にも見える黒髪、動きやすそうだが少し傷んでいる、青の配色を基調とした服装に、ボロボロの藍色のマントを羽織り、腰のベルトには日本刀をさげていた。
青年は逃げながら舌打ちした。
「ちっ、潜伏先を変えた矢先にこれかよっ…」
暗闇と足もとに散乱する瓦礫の中、必死に逃げる青年。眷属の一機が青年のすぐ左横まで迫り、アームを青年に突き刺そうとするが、青年はさっとその攻撃をかわす。
執拗な眷属の追跡は続き、さらに青年は闇の中を眷属から逃げようとするが、ついにいつの間にか踏み込んでいた、劇場内だった場所の端に、追い詰められてしまった。同時に把握した眷属の数は4機、どの眷属も青年を嘲笑うように、エンジン音のような唸り声を上げた。
「しかたねぇ…」
そして青年は覚悟を決めた表情で、腰のベルトにさげた鞘から、刀を引き抜く。
青年はそのまま眷属の一機に飛びかかり、一瞬で胴体を真っ二つに刀で切断した。青年が床に着地すると同時に、その眷属は切断面から火花を撒き散らしながら、ガシャンとその場に崩れ落ちる。
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