第1章 ハイドアンドシーク

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おとぎ話のお姫様達は 待っているだけで何もしないのに 素敵な王子様がちゃんと迎えに来て その後は幸せな人生を与えて貰っている。 王子様はお姫様の美しさだけを見て結婚を決めているみたい。 それって、私には信じられない感覚だ。 こんな本、全然面白くないって何度も言ってるのに お母さんはなぜか給料日のたびにロマンチックな童話や児童書を買っては、私に押し付けてきた。 「あなたにもいつか王子様が現われるわ」と言って。 王子様ならもう、出会ってる。 颯爽と現れて私を助けてくれたけど、 その一年後にあっさりと私を捨てて いなくなったアイツのことを王子様と言うのなら、 どうして彼は私と結婚しなかったの? 結婚てなんだろう? お母さんは、お父さんと結婚してないのに私を生んだ。 出会った時にはもう余命一年だったというけど、そんな末期の人が子作りできたっていう事実のほうがおとぎ話よりもファンタスティックな気がする。 六年生になって学校の授業でも習った男女の体の違いと性のお話を理解したとき、現実の出来事は教科書通りじゃないのだと知った。
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