第1章 ハイドアンドシーク

3/18
前へ
/134ページ
次へ
「はとざき かりん」 「はい」 朝の会の初めには必ず出欠を取る決まりがある。先生の声が、私の名前を唱える時だけはしっかり返事をして、後は心の小部屋に引きこもってシャットアウトする。 クラスメイトに興味はない。 流行りの話題も必要ない。 私に興味を持たれても相手にしない。 最初から友達なんて求めてない。 先生が私の視界に入ってきて、目を覗き込んでくるのが何となく見えた気がして意識を戻すと、途端に肉声が耳から脳内へと流れ込んできた。密閉空間が外界と繋がった瞬間の解放感は案外好きだったりする。 「夏鈴、なんだか顔色悪いけど朝飯ちゃんと食べてきたのか?」 心配そうに話しかけてきた先生は、私の顔色ばかりを気にしている。 周囲の視線が集まってきて、ヒソヒソと私のことを噂する雑音までもが脳内に届いてきて、耳の奥から不快感が溢れ出すと、それが顔に出てしまう。 「吐きそうな顔になったな…。今から保健室に行ってきなさい」 「…はい」
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

420人が本棚に入れています
本棚に追加