贈り物

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「疫病神……さん?」  声を掛けても返答はない。見えないのが当たり前だったかのように姿を目視する事が出来ないのだ。気持ち悪いぐらいに頭が冷えてしまっていて、どうして目視出来ないのか直ぐに理解してしまった。  彼は私の体質を不幸にすると言って姿が見えなくなったのだ。私の体質と言えば少し霊感があると言う事。そしてその体質の御蔭で彼の姿が見えていて幸せと感じていた。そしてその幸せが不幸となった。  つまりは幸せと感じていた霊感体質が消失して不幸となった、と言う事だ。  証拠に辺りを見渡しても幽霊の存在が確認出来ない。部屋の窓を開けて外を見渡しても一匹も姿はなかった。彼がくれたプレゼントは私にとって最大の不幸であり、幸せの可能性が秘めているもの。  普通の人間となって友達を作れと疫病神さんは言いたいのだろう。でも、それは私にとって酷な内容である。大切な友達を失った悲しみに引き摺りながら、新しい友達を作る勇気がないのだ。私は一週間ほど部屋に引きこもり布団の中で涙を流した。  両親が部屋の前に置いた食事を最低限だけ口にするだけの日々。私が泣いても疫病神さんからの慰めの言葉はない。見えないのだから声も聞こえないし、傍に居てくれているかさえ分からない。 「……私は霊感体質がなくなって幸せです」  心にもない事を口にしてみた。こうすれば幸せが不幸になるかもと思ったから。しかし、声に出しても何一つ変わる事はない。自分が発した声は部屋の中で反響する事なく消え去ってしまう。  本当に幸せだと思っていないからだろうか。もし本当に幸せだと感じていたら不幸になるのだろうかと疑問に思った。もし幸せが不幸になったとしたら、それは彼が私の傍に居てくれていると言う事ではないだろうか。  一般的に疫病神という存在が対象から離れれば不幸が去る筈だ。だけど、私は霊感体質が未だに失ったままの不幸が継続している。つまりは――。 「疫病神さんは、私の傍に、居てくれて……いる?」  勿論問いに返答はない。私の思考が正しいと断言出来ないが、否定も出来ないのだ。傍に居てくれている方法を確かめる事が出来ない。写真にも写る事がなく、映像にも映る事がない存在。確かめようが一つも見当たらないのだ。  私は無意識に空中に手を伸ばす。しかし何も掴めず空を切るだけだった。
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