第1章

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「報告、J‐12211510番、終了」 「記憶除去剤を注入後、次のプログラムをセットせよ」 「了解」 今し方夢の中で臨終を迎えた男が眠っているカプセルの装置を操作して、管制官である管理コンピューターから受けた命令を実行する。 私ことアンドロイドR‐N3000X100511号は、命令された操作を実行した後、次のカプセルの監視に向かう前に頭を上げ周りを見渡した。 周りには操作を終えたカプセルと同じ物が、見渡す限り整然と並んでいる。 整然と並んでいるカプセルの数は1億。 此処は約3000年前、放射能などで汚染され生物が生存出来なくなった地球を脱出し、人類が生存可能と思われる数百の惑星に向けて打ち上げられた、数百隻の移民船の内の1隻、TE‐49の船倉。 カプセルの中で眠るのは、3000年前まで地球で生活していてその後移民船に搭乗した人間達。 寝ている間に脳が退化しないようにする為、彼等はコンピューターが制作した数千億のプログラムの内の1つの生涯を眠りながら体験している。 現実に体験していると感じている全てが制作されたプログラム。 喜びも悲しみも、愛した恋人も、結婚して子供を授かり共に生きた伴侶も、誕生を祝った子供も全てプログラムされた物。 制作された1つのプログラムの体験が終わると、記憶が削除され次のプログラムを体験する、移民先の惑星に到着するまでの間に数百、数千、数万と。 彼等は夢の中で幾つもの人生を体験しながら、移民先に到着するまで眠り続けるのであった。
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