洋人と奈波

3/23
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
自転車だと数十分かかる奈波の家までの距離を、車だと半分の時間で移動出来てしまう。 だけど、そのたった数分のこの時間、俺は妙にソワソワした落ち着かない気持ちでいっぱいだった。 奈波はどんな顔で迎えてくれるんだろうか? 少しだけ息苦しくなって、車の窓を開けて外の空気を取り込む。 真夏の終わりかけの生ぬるい空気と海岸線のいつもの磯の香りが車内に入ってくる。 ちょっとだけ落ち着いた俺はハンドルを握りなおして奈波の家を目指す。 まだ夜の営業の前だからか、奈波の家のレストランの駐車場はガラ空きだったけど一番奥の邪魔にならなそうな所に車を停めて、自宅の方のインターフォンを押す。 「はいはーい。どなたー?」 軽快な声を出しながら玄関に出て来てくれたのは奈波の父さんだった。 「あ、ひろくん?奈波は今日は高校の文化祭の手伝いで学校行っててさ。もうすぐ帰ってくるはずだから、ちょっとこっち来て待ってて。」 おじさんはそう言うとレストランの方へと案内した。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!