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「それってさ、」
拓未と奈波に何かあったからだろう?と言葉を続けようとして、俺は口をつぐんだ。
第三者の俺が口を出すのは、彼女の行為を台無しにする事だと咄嗟に思った。
想いが叶わなくても、彼女の事、そして彼女が大事に想う奴のことを傷つけたくはなかった。
「何、なんだよ?」
俺が言いかけた言葉が気になった洋人が、俺の顔を覗き込んでくる。
その瞳は、本当に澄んでいて嘘をついてはいけないと思ったが、俺は嘘をつくわけではない。
ただ、真実だと思うことを俺の口からは言わない、それだけだ。
「何でもないよ。奈波が笑ってくれたんなら、それでいいじゃん。あんまり考えすぎると頭禿げるぞ。」
そう言って洋人の頭をチラッと見やる。
洋人が気にして自分の頭をワシャワシャと撫で始めた。
どこまでも素直な様子に、俺の方が気が抜けてしまう。
そうこうしているうちに館内アナウンスが流れて、俺たちは免許交付室へと移動した。
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