奈波と拓未

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「やっぱりまだ暑いけど、どこか秋っぽいな。」 そうひとり呟きながら、部室の窓を開けて外の空気を入れ替える。 締め切っていたせいか、どこか埃っぽく蒸し暑さがある部屋に、涼しい磯風がふわっと舞い込んで来る。 私たちが通うこの高校は港が眼下に見える高台にあり港から来る磯風が山に抜ける通り道になっているため、窓を開けると潮の香りを含んだ風を感じる事が出来る。 この香りを嗅ぐ事が出来るのも、後わずか。 そう思うとどこか切なさを感じてしまう。 夏休みも終わろうとしている今日、私は夏休み明けに行われる文化祭の部活の出し物の準備の手伝いをしに学校に来ていた。 もう部活は引退しているけれど、進路もだいたい決まっていて受験勉強の必要もなく一応副部長だったので後輩からの「助けて!」の声を無下にすることも出来ず、今部活道中の後輩たちの代わりに道具を漁っていた。 弓道部だけど毎年恒例の喫茶店をするという事で、机に敷くクロスなどを棚から探す。
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