魔法のコトバ

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魔法のコトバ

「もしかしてサンタさんなの?」 白いもじゃヒゲを生やしているワケでもなければ、そういうコスプレをしているワケでもない。ごく普通の男子で大学生、それが俺。 サンタさんとは縁も見てくれも遠くかけ離れている筈なのに、突然そんな質問をされたクリスマス当日の昼下がり。 それは公園のゴミ箱に、行き場を失くしたプレゼントをこっそり捨てた、まさにその瞬間。 問いかけてきたのは、4歳か5歳くらいの男の子だった。 「サ…サンタさんでは、ないかも?つーか、その…今、見てたの?」 「うん。ごめんね?みちゃったの。」 男の子の純粋なまなざしに射貫かれて、たどたどしく且つ中途半端に答えてしまう俺。 対照的に、俺の空気を読んだのか申し訳なさそうに、しかし、しっかりと答えてくる男の子。 「そうか…みちゃったのか。」 俺は呟いて、ガックリと項垂れる。
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