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「彼、いい男だもんなぁ」
そんな誘導尋問には乗らない。
下手に反応するもんかと黙ってソーダを一気飲みする。
「この二週間の観察結果だよ。及川だけでなく他にも色々」
「色々?」
西岡課長は笑っただけで、伝票を持って立ち上がった。
「他人のことは見えるのに、自分のことはまったくだ」
〝色々〟のことを聞きたかったのに、そんな台詞を聞くと何も言えなかった。
店を出ると、外は照りつけていた日差しが和らいで、穏やかな春の夕暮れになっていた。
都会の真ん中にも季節はあるんだなと空を見上げる。
それはコンビニの品揃えだったり、ショーウインドウのディスプレイだったり、そういう商業的な季節感に埋没していて気づきにくいけれど、敷石の隙間に咲く花や風の香りは私たちに季節を教えてくれている。
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