消せない恋心~嫉妬と誤解

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「はぁー……」 部屋を出ると、思わずため息が漏れる。 課長と一緒に視察をしている間はまだよかったけれど、デスクワークが中心になると、企業提携の厳しさをひしひしと感じるようになった。 うちの社とエリート集団の倉上とでは社風も文化も違う。 不協和音とまではいかないまでも、何となくしっくりいっていなかった。 はっきり言ってしまえば、倉上社員が秦野地所を格下に見ているのだ。 この状態でディスカッションなんてできるのか心配になるけれど、企業提携や合弁にはこういう摩擦がつきものなのだろう。 そんな中でぺエぺエの私があのハイレベル集団にプレゼンテーションするなんて、あまりにハードルが高すぎる。 プレッシャーでぺしゃんこ状態の私は、人気のない深夜の廊下をぶらついて、ささやかな解放感に浸った。 秦野のオフィスと違って、ここは靴音が響かない絨毯敷なので、一人であればだらだら歩いてもばれない。
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