消せない恋心~嫉妬と誤解

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アルミボトルを握りしめて無言で突っ立っている私に背を向け、遼太郎が自動販売機に小銭を入れ始めた。 チャリン、チャリン、という音を聞きながら、どのタイミングで逃げるか悩む。 今……? 「それ、当たりか?」 でも、ドリンク剤を選んだ遼太郎が小瓶のキャップを開けながらこちらを向いたので、私は逃げるタイミングを失った。 彼が言っているのは、私の手のソーダのことらしい。 オレンジ味かグレープ味か決めかねていたけれど、確かに炭酸系なのは当たりだ。 「どうしてわかったの?」 うっかり敬語を忘れたけれど、遼太郎は特に気を悪くした様子はない。 「どっちがいいかな、って言っただろ」 そう言われて自動販売機をもう一度眺める。 遼太郎より回転の遅い私の頭はワンテンポ置いてから納得した。 二択の条件に合うのは炭酸だけだ。 私の好みを覚えていてくれたわけではないと知って、少しだけがっかりする。
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