消せない恋心~嫉妬と誤解

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それにしても、握力には自信があるのに、このボトルはどうしてこんなに固いのだろう? 「貸してみろ」 遼太郎の腕が伸びてきて、私の手からボトルを取った。それからプシュッと小気味のいい音がした。 「……ありがとう」 ボトルを受け取り、一口飲む。 ピリピリした泡が口の中で弾け、爽やかなオレンジの香りが五感に染み込むのを味わう。 実は最後の瞬間、グレープ味に決めかけていたのだけど、やっぱりオレンジ味で良かった。 この二択はいつも迷うのだ。 二人がいる小さな空間は静かで、身じろぎの音すらごまかせない。 緊張しながら、ちらりと横目で遼太郎の手を盗み見た。 あんなに固いキャップをいともたやすく開けるなんて、やっぱり男の人って力が強いんだなと、当たり前のことに感動する。 大学時代に実家を出て以来ずっと一人暮らしだから、生活にまつわることは力仕事も全部、自分ひとりでやってきた。 肩肘張ってきたせいか、遼太郎との隔たった関係にも関わらず、男性に寄り掛かる甘さが恋しくなる。 たかがボトルのキャップを開けてもらっただけなのに、どれだけ私は寂しい女なのだろう。
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