消せない恋心~嫉妬と誤解

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男性と付き合ったことはある。 大学時代に、同じゼミの男子に告白されて付き合ったのが初めてだ。 その後にもう一人。 誰かに思いきり恋をして、大人になりたかった。 そして、空しい初恋を塗りつぶしたかった。 でも、胸を焦がすような感情は持てず、それ以降は恋と疎遠になっていった。 死ぬほど好きな相手と相思相愛になれる幸せを、私は経験したことがない。 「仕事、大変か?」 突然、遼太郎が口を開いた。 「やりにくいだろ。うちの奴はプライド高いからな」 「ううん」 遼太郎も雰囲気のまずさを感じているのだろう。 倉上の社員たちが秦野の社員の何気ない言動にいちいち眉をひそめるのが主な原因だ。 こうして私が自動販売機に話しかけているぐらいだから、末期だと思われたかもしれない。 「やりにくいことがあったら俺に言えよ」 「……ありがとう」 優しい言葉をかけられると、心が弱くなりそうだ。 膝の上のアルミボトルを握りしめる。
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