消せない恋心~嫉妬と誤解

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ドリンクコーナーに再び沈黙が落ちた。 オレンジの香りが鼻から抜けると、それとは違うシトラスの香りに気づいた。 遼太郎がつけているものだろう。 私は香水に疎いので、どこのブランドの何かはわからなかったけれど、それがとても気に入った。 この香り、好き……。 遼太郎に気づかれないよう、静かに吸い込む。 「大学は京都だったよな」 遼太郎が話題を変えてまた口を開いた。 「あ……うん」 やっぱり覚えていてくれたんだ。 彼に気を許すまいと思うのに、嬉しいと思ってしまう自分に抗えない。 「勉強、頑張ったんだな」 「うん」 私は〝うん〟しか言えないのだろうか? でも、頑張った当時の葛藤を思い出すと色々な思いが込み上げて、何も言えなかった。
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