消せない恋心~嫉妬と誤解

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「大学は楽しかったか?」 そう尋ねる声はとても優しかった。 また「うん」と答えてうつむく。 ずっと昔、彼に疎まれる前にもこんな声を聞いた。 「一人暮らし、大変だったろ」 「うん」 ボトルについた結露を指で拭う。 自分で決めて実家を飛び出したのに、最初の頃は寂しくて仕方がなかった。 「寂しくって、最初の頃はずっとテレビつけてた。音が鳴ってたら気が紛れて」 笑って答えたのに鼻がツンとする。 「でも、電気代節約でそれやめた」 どうして私の口はこんなどうでもいいことしか言えないのだろう。 でも、隣で遼太郎が微笑んだのがわかった。 「そうか」 答えはぶっきらぼうで短かいけれど、包み込むような声だった。 不意に泣きたくなる。 家族に弱音を吐けなかった分、その反動が今頃きたのかもしれない。
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