消せない恋心~嫉妬と誤解

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「高校出たばっかりだったもんな」 「うん」 しばらく沈黙したあと、遼太郎が窓の外を見ながら低い声で尋ねた。 「どうして家を出たんだ?」 「……」 いくつもある本当の理由は、誰にも言えない。 あの場所にいたら、私はいつまでも失恋したままだったから。 あの場所にいたら、たった一人の姉を憎んでしまうから。 そして、あなたから遠く離れた場所で、あなたを忘れて新しい自分になりたかったから。 でもこうして再会してしまったら、またあの頃に戻ってしまいそうで怖かった。 「自立したかったの」 できるだけ明るい声で、誰もが予想するありきたりな理由を口にする。 「俺もそうだったかな。大学三回生から一人暮らしをさせてもらった。研究で忙しかったのもあったし」 それを聞いて過去の痛みを思い出す。 遼太郎が一人暮らしを始めて以降、姉が外泊する度、二人が部屋で抱き合っていた光景が蘇り、嫉妬に苦しんだ。 もちろん進みたい学部という正当な動機もあったけれど、結果的に志望大学決定の最後の引き金となったのはそれだったかもしれない。
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