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「強くなったよ。力仕事も全部やったし」
私がそう言うと、遼太郎は少し間を置いてから反応した。
「男の手があるだろ」
ないよ、と否定しようとして止める。
男の影がないなんて、ずっと遼太郎を思い続けていたみたいで気持ち悪く思われるかもしれない。
かといって遍歴を誇張しても、遼太郎に見透かされるだろう。
お化粧をしている今でもあまり綺麗とはいえない私の、さらに冴えない子供時代を知っているのだから。
答えに窮して沈黙すると、自動販売機のモーター音がやたらに大きく聞こえ、余計に焦る。
私は中途半端な嘘をついた。
「まあ、たまに」
遼太郎がどう受け取ったのかはわからないけれど、昔〝ガラの悪い男にホイホイついていった〟私にあまりクリーンな印象はないのだろう。
「ま、一人暮らしだもんな」
「……」
その口調はなぜかどことなく自分に言い聞かせているように聞こえた。
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