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第一回のプレゼンテーションを終えても,仕事のハードルは高さを増してまだまだ続く。
膨大な情報から具体像を構築していくため、連日ディスカッションが続いた。
実績を認められて選抜された精鋭だけに、彼らの思考の回転の速さや深度についていくのは、まるで難解な講義を聞いているようなものだった。
講義のように聞くだけでいなら、まだいい。
生徒ではないのだから、私も対等に発言しなければならないのだ。
「なんか……。激しく場違いでしたかね……」
「気にするな」
昼休みの屋上庭園で、私はフェンスに両手でぶら下がるようにして項垂れた。
隣では西岡課長が美味しそうに昼の一服を楽しんでいる。
倉上ビルではここが唯一、煙草を吸える区域だ。
「それって、やっぱり場違いだったってことですよね?」
「まあ否定はしない」
「あああー」
「ほらほら、チンパンジーだと思われるぞ」
西岡課長が社員食堂の窓を顎でしゃくってみせた。
「はい……」
ぶら下がるのをやめ、また項垂れる。
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