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西岡課長は私の愚痴などどこ吹く風で、スパスパと煙草を一本吸い終えると、携帯用の灰皿にそれを押し込んだ。
「及川はそれでいいんだよ」
「……低い球要員ですか?」
「そういうこと」
「ひどい」
抜擢でも何でもなく、モルモットだったとは。
西岡課長はハハハと笑って、子供をあやすように私の頭を撫でた。
「全員が同じなのは危険なんだよ」
「……」
「倉上に任せたら超高層ビルだらけになる」
「それはいかんですね」
視察の時に見た小さな神社の隣に超高層ビルが並んでいるのを思い浮かべて、私は顔をしかめた。
「そういう僕も、ステイタス系の超高級マンションが好きだ」
思わずアハハと笑ってしまった。
「課長、おしぼりで顔拭く人種のくせに」
課長ファンの関西支社の女性社員たちが知ったらどうなるだろう。
課長の悪癖を知っているのはコンビを組んでいる私だけだ。
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