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「どうかした?」
「いや」
遼太郎の態度が気になり、ついしつこく食い下がる。
「気になるから言って」
すると遼太郎は溜息をついて、冷ややかに言った。
「もう少し人目を気にした方がいいんじゃない?」
「……え?」
伝わって来る軽蔑の感情は言葉よりも強かった。
再会してから、マイナスの感情を向けられるのは初めてだった。
頭を強く叩かれたようなショックのあと、胸のずっと奥に何かが突き刺さったような痛みを感じた。
これは……そう、遼太郎が私の気持ちを迷惑がっていると姉から聞いた時の痛みに似ている。
そのことに気づいた時、私は自分が故郷から逃げ出したもう一つの理由──直視できずに気づかないふりをしてきた理由を悟った。
私は他の誰より遼太郎に否定されることが怖かったのだ。
そして、それは七年の時を経た今でも変わっていない。
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