第十六章 思い出の中の悪魔

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 里琴は、まず行徳の家を説明してくれた。里琴の父親は、日本人であったが、様々な国の女性と結婚していた。最初の妻が、里琴の母親であり、日本人であった。里琴の母親は、里琴が五歳の時に、病気で他界した。その時の保険金を元に、父親は事業を始めた。  次に結婚した女性が、香港の富豪で、そこで父親は海外に拠点を移した。その女性も二年で亡くなり、里琴の父親はタイの政治家の娘と結婚した。 「父親は五回ほど結婚しています。私は、母親が亡くなる時に、何か、とても怖いものを見たのです。でも、それは現実とは言えないもので、誰にも言いませんでした……」  里琴の父親は、この村の出身であったので、里琴が何を見たと言っても驚かないだろう。しかし、里琴も俺のポケットに入っていた大慈が飛び出して、料理を食べ始めても驚いていなかった。それどころか、里琴は自分の料理を大慈に与えていた。  会話をしていると、里琴は何かを思いだすのか顔色が悪くなってくる。 「里琴さん、料理を食べましょう」     
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