第十三章 蜘蛛を持つ男 三

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 バイトの時間が終わると、どうにも失踪事件が気になってしまった。そっと家を出ようとすると、谷津が鞄を背負って立っていた。 「上月、俺に情報を求めた時点でバレているって」  そうなのかもしれないが、谷津は戦闘員ではないので、連れて歩けない。俺は、普通にしていても、逃げる、戦うが日常になってしまうのだ。 「谷津、危険だからさ。ダメ」 「危険だから、俺が行くのでしょ。俺は、危険ならばすぐに逃げるし、すぐに適任者を呼ぶからさ」  それに、ゲームの参加人数を増やさないと収入が減るので、事件を見つけておくらしい。  世の中には絶対傍観者というのもいるが、半参加型というのもいる。谷津は、この二点に絞り、アプローチをかけていた。傍観者はテレビの感覚で見ていて、新しい情報が無ければすぐに飽きてしまう。その傍観者を、半参加者にして、参加の面白さを知って欲しいという。 「野次馬が増えるだけでは?」 「でも、無関心よりも、ずっといい」  朱火駅に向かうと、新しい立ち食いそばが増えていた。俺は、そばは余り食べないが、少し興味はある。じっと店を見つめていると、サービス券を貰ってしまった。  蕎麦屋の横を過ぎ、駅のホームに入ると、日曜日なので空いていた。そこで、横を見ると、谷津は端末で何かを作成していた。 「……谷津、蜘蛛って危険だよね」 「危険だけどさ、ほら小出さんは数百年も蜘蛛と生きているでしょ。そのノウハウは必要な事で、その知識は危険を安全にできるかもしれないよね」  要は、蜘蛛も運用次第ということか。
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