第十三章 蜘蛛を持つ男 三

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 そこで、電車が来たので乗り込んだが、俺は降りる駅を知らないと気付いた。行方不明の出ているホテルを急いで検索すると、最寄り駅を確認してしまう。  すると、ホテルの情報の他に、あちこちに書き込みがあった。このホテルの後ろに、飲み屋街があるのだが、そこで殺人事件が起きていた。しかし、その事件は捜査されずに喧嘩で終ってしまったらしい。  殺されたのは、お好み焼き屋の女房であった。その時点で、喧嘩というのはおかしい。その女房は、酔った客を駅まで届けようとしていた。客は、終電に乗りたいと言っているのに、立って歩くのが困難な程に酔っていたのだ。その送ってゆく道中で、女房は背中に三か所、胸に二か所の刺し傷を受け、ゴミ捨て場に寝かされていた。  送っていった会社員は、酔っていたせいで記憶はなかったが、服に血などは付いていなかった。それに、目撃情報が複数あり、和やかに駅で二人は別れたと、駅員も証言していた。終電に間に合って、二人でバンザイをしていたらしい。  駅までは、女房は無事であったということだ。そして、帰り道で何かがあった。  何故、喧嘩となっているのかというと、そこで、酔っ払いの喧嘩騒動が起こっていたかららしい。喧嘩は、数人の男性で、殴り合っていたが警察に連行されていた。酔った上の喧嘩で、示談になったらしい。  それで、この女房が殺されていたのが、理由が喧嘩となったのは府に落ちない。酔った上の喧嘩とは、何の関連もない。 「上月、又、事件か?それも不思議だよな」  そこで、谷津はこの事件の資料を見せてくれた。  まず、発見場所には血が数滴しか落ちていなかった。刺し傷があるので、ゴミ捨て場で殺されたのではない事になる。しかし、駅での目撃情報から、倒れているのを発見されるまでが、二十分程しかなかった。どこかで殺して移動したとなると、相当に短い時間になる。 「血液が少なくなっていた。それと、この刺し傷の刃物が不明だ」 「全部合わせると、この犯人は分かったよ」   状況証拠だけ繋ぎ合わせてゆけば、この犯人は蜘蛛なのだ。短時間で、複数の蜘蛛が血を吸っていったと考える。金の蜘蛛のような存在があるのならば、刃物のような傷も頷ける。 「まあ、きっと蜘蛛だよね……」  そこで、谷津はお好み焼き屋の店主を調べていた。警察により、理不尽な捜査の打ち切りは、店主の何かであった可能性もある。
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