第十三章 蜘蛛を持つ男 三

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 すると、女房の死で、店主は相当に警察に捜査されたらしい。妻が殺された時間は客の接客をしていて、証人が幾人もいるというのに、警察は亭主を疑って犯人しようとした。挙句、証拠は何も無く検挙できず、喧嘩に巻き込まれて事故死などという不可解な報告になっていた。 「事故死?」  これでは、流石に不可解だろう。  しかし、この店主が元裏稼業の人であったり、女房も昔はAV女優というのもあり、捜査されたくない者も多く、そのまま有耶無耶になってしまっていた。 「職業か……」  過去は過去なのであろうが、確かに調べられたくないこともある。  しかし、その後、このお好み焼き屋の周辺でも、おかしな事が発生していた。 「猫が消えた」  そこで、駅に到着したので谷津とホームに降り立った。この駅は、朱火駅よりも都心に近くなっている。そのせいなのか、マンションは多くあるが、アパートは少ないように見える。駅前には、大きなショッピングセンターがあり、どこか近代的な佇まいであった。  駅から外に出ると、日曜日でも多くの人が行き交っていた。そのお目当ては、巨大なショッピングセンターで、一号館から、五号館まであり、道路は駐車場待ちの渋滞になっていた。その渋滞を避けて、電車で来ている人も多かった。  ホテルを目指して歩いていると、線路に沿って、小さな飲み屋が多く存在していた。これは隠れていて、電車からは見えていなかった。 「谷津。焼鳥を食べてゆこうよ」  そこで、谷津は立ち止まると、朝食焼鳥というメニューを見ていた。 「いいよ。このスペシャルにする」  会話というのは大切で、慣れない町に来たら、人が多い店で会話を聞いてみるのもいい。そこで、何か違う発見がある。  焼鳥屋の店内に入ると、居酒屋のような雰囲気ではあったが、半個室の形式になっていた。来ている客は家族が多く、ショッピングセンターのランチが高いので、ここまで足を延ばしているらしい。  誰もが、ショッピングセンターの話をしているが、その中に、学生のようなグループを見つけた。どうも、この付近でバイトをしている連中らしい。 「花道というレストランがあるだろ。その裏手だったよ。悲鳴があってさ、何かと思ったけど、誰もいなかった」 「そうそう、でも、大きな蜘蛛がいてさ。これが悲鳴の原因なのかなと、写メを贈ったよ」
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