第十三章 蜘蛛を持つ男 三

6/9
前へ
/210ページ
次へ
 谷津も、西崎に蜘蛛を寄生させようと、真面目に調べているらしい。蜘蛛の餌は一日一回で、鶏肉と書かれていた。でも蛙でもいいらしい。他に蜘蛛に闇を喰わせるのは、月に一回となっていた。余り多く闇を喰わせてしまうと、狂暴化するらしい。しかし、蜘蛛は腹が減った状態が長く続いた場合も、狂暴化するとなっていた。  狂暴化は食べる事によって納まるが、俺は闇を持っていない。 「闇玉、あるかな……」  最悪の場合は、光二の闇玉を出して貰おう。 「あ、鶏かゆだってよ」  あっさりした味で、かゆが美味しい。  そこで、料理を完食すると、ホテルに近寄ってみた。ホテルは営業していないせいか、電気が付いておらず、暗くなっていた。中には誰もいないらしい。  ホテルの裏手には、問題のお好み焼き屋があり、夜からの営業になっていた。 「谷津、監視カメラを設置してよ」 「勝手に設置はできないけど、あるのは活用しようかな」  蜘蛛が潜んでいるのは、道路ではない。少し路地に入ったような場所で、高い位置から襲ってくる。地面にいたら踏まれてしまうので、隅で隠れている。見えにくい、暗い箇所に潜んでいる。 「宿泊客は、この路地を通った」  そこで、谷津が監視カメラの位置を確認していた。  時系列的にまとめてみると、お好み焼き屋の女房が殺されてしまったのが最初になる。そこで、他の行方不明者がいないのか確認してみると、失踪、家出などが沢山あった。 「夜、しかも終電の頃。周期性があって、飢餓状態で喰い尽くす」  計算してみると、一週間に四人というのは周期性ではない。そのペースでいったら、もう十人は消えていそうだ。 「人工的に飢餓状態を作っている。そこで、食べるスピードを計算した」  最初は二人、これは同時に食べるには多すぎる。女性が小さく手頃だろう。そこで、女性を食べさせたら、女性の亭主が探しに来たので、思わず襲ってしまったというところだろうか。  そして、今度は男性を襲わせた。これが、本当の目的ではないだろうか。蜘蛛で襲わせたいのは、男性であるのだ。  そこで、歩いて駅に戻ると交番があった。ここに交番があるというのに、女性は殺されてしまった。 「恨みの先は、警察官なのかな……」  でも、どうにもおかしい。最初のお好み焼き屋の女房の殺害が蜘蛛だとすると、復讐のために亭主が蜘蛛を使うのははおかしい。 「上月、前を見て歩いてね」
/210ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加