第二章 千年時計 二

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 翌日、志摩の手の中で目覚めると、リビングに直江津が縛られていた。李下の紐で縛られているので、逃げる事は出来ないだろう。俺が水を飲んでいると、直江津の目が、俺を追っていた。 「守人様。おはようございます。護衛はいないのですか?」 「いません」  直江津にも水を与えようとしたが、手も縛られていた。そこで、俺が直江津に寄ってゆき、水を与えようとすると、手を掴まれた。 「これでは、すぐに攫われてしまうでしょう……皆さん、甘いですね」  直江津は、李下の紐をすり抜けてしまうらしい。では、ここに居るのは、自分の意思ということになる。 「大丈夫ですよ。李下さんの、心臓の紐は外せません」  直江津は、水を飲むと俺をじっと見つめていた。 「健康ですね。運動機能も申し分ない。けれど、成長が遅い。それは、度重なる仮死のせいもありますが、細胞が活性化していない」  直江津は俺の腕と足を持って、確認していた。 「成長しきっていないのに、無理な事をしているようですね。関節が疲労している」  そこで、直江津が足をマッサージしてくれた。直江津のマッサージはかなり痛いが、重さが取れスッキリしてくる。俺の呻きに心配して出てきた志摩が、直江津が動ける事に驚いて、俺を奪い返そうとした。 「志摩、大丈夫。マッサージしているだけだから」  しかし、ギブアップしたいくらいには痛い。 「志摩さんですか。やり方を覚えてみましょう。この守人様は、無理をしそうだ」  そこで、直江津は各骨の位置と、対処の方法を志摩に教えていた。しかし、志摩よりもいつの間にか来ていた、大慈(たいじ)の方が真剣に聞いていた。 「全身の骨の位置を暗記します。レントゲンで分かるズレが出たら、人は動けません。ほんの微かなズレで、人は痛みが出るのです」
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