第十三章 蜘蛛を持つ男 三

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「谷津、恨まれるような事はしないでね」 「しないよ。俺は、守人様の×だよ。俺が恨まれると、守人様が危険になるでしょ。上月はいいけど、守人様は困る」  谷津には独自の理論があって、人は群れの生命体であるという。群れの性質のあるものは、独自の通信方法を身に付ける。そして、独自の伝達方法を持つ。人は言語が発達してしまい、この群れの伝達方法が劣ってしまったらしい。 「でも、孤独になると、人は狂う。精神が崩壊してゆくのさ。人はどこかで繋がり、知識を共有したいと願っている。群れに戻りたいわけね」  村は守人様を護るという、共有の意識を持った。守人様に属する×も同様で、繋がりを得て、崩壊を留めている。 「守人様に必要とされる事は、×の存在証明みたいなものだ。そこで、上月のこの、いつでも危険が役に立つ」  群れの性質を持っている人だが、生まれて成長するまで群れに馴染めず、閉じこもった個体は崩壊する。どこにも属せない孤独というのは、人の全てを蝕んでくる。
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