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「女性は自分の子孫を自分で産める。決して不幸ではないと、俺の母親は言っていたよ。特に親父に、自分の産んだ子供が育つ嬉しさは分かるまいと、豪語していた」
谷津の母親は、元気な女性であった。俺の母親も、随分励まされたときく。
「女性は、子供を産んで育てて、本当はそれだけで良かったのかな」
それが、仕事を持ったり、男女平等の権利などで、平等という不幸になってしまったのだろうか。
「優秀な女性もいるからね。権利は平等だろう?」
「そうしたら、子供を産む男性がいてもいいのかな」
この議論は、デリケートなのでこれ以上は控えておくことにした。谷津と顔を見合わせると、苦笑いする。でも、子供を産んだ事が、不利にならない世の中を望んでしまう。
朱里駅に到着すると、駅ビルに向かう。このこじんまりとした駅前の方が、俺は好きなのかもしれない。
非常階段を登り家に入ると、そこには永新と黒川が睨み合っていた。
「何か、ありましたか?」
「……いつもの事だよ。永新は、兎屋とも小出とも寝ていてさ、更に、新しく恋人を作ったらしい」
永新が幾人も恋人を作るのは、確かにいつもの事で気にしていない。でも、黒川が怒っているという事は、相手に問題があったのだろう。
谷津の一緒に部屋に入ってきて、黒川と永新を見比べていた。そして、二人の違いが分かると、何か検索していた。
「上月、俺は名張からは振られているからな。そっちとの二股はないから」
谷津が映像を見せてくれると、そこには永新と並んで歩く俊樹の姿があった。
「……永新さん。俺の周囲の人には手を出さないでください。永新さんは、数か月で飽きてしまうのでしょ?いつも、いつも……」
黒川が怒った気持ちが分かる。永新は、いつも数か月で別れてしまうのだ。そんな永新に、大切な人は渡せない。兎屋や小出のように、大人の関係と割り切っているのならばいいが、俊樹はまだ子供だろう。
「誤解だって言っている。たまたま、村で会ったから、一緒に飯にしただけだ。それに、会った時は、小出も一緒だった」
「手を出していないのですね?」
永新が真剣に頷いている。
「信じますよ?信じて嘘だったら、絶対に許しませんよ」
「そこは信じて」
そこはということは、他にはあるのだろう。
「兎屋の所に、小出を置いてきた」
西崎に会ったと言うが、どこか永新は谷津と目を合わせないようにしていた。
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