第十四章 蜘蛛を持つ男 四

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「金色が喋っているの?」 「そうです。言語機能を活用してみました」  小さな子供のような声で、金色が喋っていた。 「異種だよね?」 「異種です。通常蜘蛛との混血が多いです。ここには私たち五匹しかいないので、不利です。仲間を呼んでいる間は逃げてください」  蜘蛛は本能で、異種を排除しなくてはいけないと命じられていた。故に、蜘蛛は異種を見て戦う事しかできない。  屋上にいる蜘蛛は、じっとこちらを見つめていたが、急に隠れ始めた。その一斉の行動は、張り巡らされた糸の指示によるものらしい。 「炎神丸!」  炎で焼いてしまおうとしたが、隙間に隠れてしまう。 「水神丸!」  この蜘蛛は水にも強く、沈んだだけでは死にそうにない。 「影を慕いて闇と成す。光よ我の元に来たれ、我の友を守れ、我の地を守れ。闇よ我と共に在れ、上月 守人、願い奉る。我はこの村の守人也」  ここに光と闇で結界を張ってみた。これで、蜘蛛はこの空間から出られない。 「上月、地区を限定していないから、結界が徐々に広がってゆくぞ。まあ害はないけどね……」  害はない結界であったのか。どこが間違っていたのか反芻していると、誤りに気が付いた。どうして、ここには蜘蛛しかいないのだ。蜘蛛使いが、ここにはいない。もしかして、この蜘蛛は陽動ではないのか。 「黒川さん、ここにいる敵の蜘蛛を全部切り殺してください。これ陽動ですね。本命はあっちの世界です」 「わかった」  黒川が刀を抜くと、永新も横で刀を抜いた。二人の息は合っていて、黒川は風で蜘蛛を飛ばしながら切り、永新もその風を利用して蜘蛛を切り殺していた。  異種の蜘蛛は、命令で動いているように感じる。俺がエレベーターに乗ろうとすると、集中して攻撃してきたので、この場に足止めする役割なのかもしれない。 「谷津、ホテルの周辺の画像は出る?」  飛んでくる蜘蛛を白光丸で切っておく。しかし、蜘蛛の数が減った気がしない。やはり、炎神丸で燃やしてしまおう。炎神丸を出した瞬間、俺の横を飛んでゆく影が幾つもあった。その影を追ってゆくと、地面に降り立ち、異種の蜘蛛と戦っていた。 「応援が来たようです。我々は雌になっているので、同じ種の雄が守ります」  俺の周辺の蜘蛛から、攻撃を受け、蜘蛛も喰われていた。 「谷津、画面を見せて」 「うん。ホテルの周辺に、蜘蛛が多発しているね」
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