第十四章 蜘蛛を持つ男 四

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 そこで、エレベーターを呼び、屋上に止まった。ドアを開けようと思った瞬間、何か嫌な感じがした。 「炎神丸!」  扉が開いた瞬間、ドアの中から大量の蜘蛛が出てきていた。何万匹なのではないだろうか。俺は、谷津を後ろにして、炎神丸で炎の結界を張ったので、どうにか蜘蛛を凌いでいた。 「上月!」  散ってゆく蜘蛛に、別の蜘蛛が襲い掛かっていた。俺の結界に触れた蜘蛛は燃えてゆくが、余りの蜘蛛の数に、この場から動く事が出来ない。  しかも、蜘蛛は全て、飢餓状態で闇や人を喰おうという意識しか無くなっていた。 「これは、まずいね……」  谷津は、今の映像をどこかに流し、蜘蛛を一匹捕らえると、同じく映像と生態を教えていた。 「……谷津、手、齧られているよ」 「あ、本当だ。この指、感覚ないからな……」  谷津の指に、布を巻くと、前も見えない状態になっている蜘蛛の壁を眺める。火力を強くするのもいいが、周囲が見えないので危ない気もする。 「生活安全課、到着しました!」  声はするが、生活安全課の姿が見えない。 「守人様、暫し動かないで下さい」  暫く俺がそのままでいると、他の炎が見えていた。津賀と、相沢が火炎放射器のようなもので、蜘蛛を焼き殺していた。その炎はかなり凄く、一気に燃やし尽くす勢いであった。黒川と永新は、貯水タンクの上に避難して、火炎放射器から避難している。 「守人様の結界から、蜘蛛は出られなくなっています」  でも、結界に入ってはきていた。 「あ、エレベーターに結界を張ればいいのか」  そこで、エレベーターに結界を張ると、黒川と永新も乗り込んできた。 「向こうの世界にも、蜘蛛か?」 「そうです。こちらは陽動だったようです」  エレベーターで一階に行くと、他の生活安全課のメンバーが車を用意してくれていた。 「生活安全課の清水です。神社まで同行します」  清水は若い男性で、爽やかな笑顔を浮かべていた。 「清水さんは、屋上の応援に行かなくてもいいのですか?」  清水の笑顔が、少し曇った。 「私の名前、清水でしょう。炎と相性が悪い上に、蜘蛛が大嫌いなのです……」  そこで、逃げるように送迎に立候補したらしい。
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