第十五章 蜘蛛を持つ男 五

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 そこで、傍観者の数字が増えてゆく。その他に、この元警官の目撃情報が増えてきた。 「谷津、この警官の居場所を特定してよ」 「分かった、やっている」  そこで、遠隔操作で慧一も谷津の手伝いをしていた。  お好み焼き屋の店主を助けるには、犯人を捕まえた方が早い。この犯人は、きっと付近に潜んでいる。  かなり粘着質な性格で、ホテルを蜘蛛の巣にして、じっと復讐の機会を狙っていた。こんなチャンスで夢の時間を、自宅で過ごすなどないだろう。きっと、この近くで息を潜め乍ら笑っている。 「見つけた……今、ホテルの窓から外を見ている」  谷津の画面は望遠で拡大してゆく、そして犯人が笑っている姿を映していた。 「谷津、この映像も発信していて」  俺は、このホテルに向かおうと立ち上がる。位置を確認すると、そう遠くない。 「この男は、インターネットで蜘蛛を買ったそうだ。それで、飼い方も教えて貰ったらしい」  人を殺す方法というのが、売られていたという。でも、慧一が検索すると、全て消えていた。 「行ってくる!」  谷津の部屋を飛び出すと、喫茶店ひまわりを走り抜けようとした。しかし、李下に捕まり睨まれてしまった。 「永新に、守人様をここから出すなと言われている」 「でも、行かないと!犯人が逃げる!」  俺は、画像を見せながら、必死に訴えてしまう。蜘蛛で人を殺したなど、現在の警察が信じるはずもない。この男は、こちらの世界で犯罪にならないと知っているのだ。 「では、俺も行きましょう」  李下と一緒に非情階段を降りると、既に車も用意されていた。李下も先を読んで行動している。  谷津のナビで、犯人のいるホテルに行くと、ホテルの外が騒ぎになっていた。車から降りて野次馬に混じってみると、野次馬は上を見上げている。俺も倣って上を見ていると、ベランダにサルのように座って、叫ぶ男がいた。 「何でしょうか?」 「薬物中毒か何かでしょう。襲われる、殺されると叫んでいるけど、部屋には誰もいないみたいよ」  叫んでいるのは犯人で、確かに相手は何も見えないが、手を振って幾度も払っていた。その度にベランダから落ちそうになって、別の場所から悲鳴が上がっていた。  レスキューなのか、警察なのか人が近寄り、説得しようとしているが、男が半狂乱になっていて近寄れないようだ。 「金色、あそこにいるのは蜘蛛だよね……」
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