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「はい。近くに、小出様がいるようです。人殺しという、蜘蛛の誤った使い方は、小出様が許しません」
これでは犯人に近寄る事ができない。野次馬と同じように見上げていると、李下も並んで立っていた。
「……まずいですね。説得に行ったのは、彼の元上司だそうです」
李下の言葉が終わった後に、犯人は説得に来た警官を抱えたまま、ベランダから飛び降りた。
「……下にマットレスとかあったかな?」
「あっても、あの高さでは無理でしょう」
では、下を確認せずに帰る事にしよう。
「蜘蛛はどうなるのでしょうか?」
「小出に聞いてみるか?」
李下が小出に電話を掛けると、小出は村の兎屋にいた。ここに来ているのは、小出の長年の付き合いの蜘蛛らしい。
「長年の付き合いの蜘蛛って何?」
そこで、金色が手に乗っていた。
「そうですか、小出様の気配ではなく、六助(ろくすけ)様でしたか」
「六助様?」
蜘蛛使いが死んだせいで、蜘蛛は散っていったらしい。飢餓状態ではあるが、固まって攻撃する事が無ければ、人は殺さないで済むだろう。
再び李下の車に乗ると、黒川と永新が交互に、李下に迎えに来いと怒っていた。李下は、表情を変えずに、きっぱりと断っていた。
しかし、ホテルは黒川や永新のいた場所に近かったのか、黒川が走って寄ってきていた。
黒川が走るなど、戦闘時以外では見た事がない。珍しいなと見ていると、黒川は車に乗り込み、ドアをロックしていた。次に永新が来ると、乗せろとうるさい。
「お前らは、子供か。兄弟喧嘩は止めろ!」
仕方なく、李下が二人を車に乗せていた。
「清水さんは、どうしました?」
「蜘蛛が嫌いと叫びながら、報告書を書いていたよ。こちらに来たついでに、買い物をして帰るそうだ」
警官は多く亡くなってしまったが、この事件は迷宮入りが確定になった。小型爆弾のせいにするにしても、犯人は捕まえる事ができないだろう。
「金色、それで、六助様って誰なの?」
「古参の蜘蛛なのです。小出様と共に生きているのに、雌にならずに、しかも巨大なままです」
金色は小さいので、蜘蛛でも耐えられる。六助というのは、どのような大きさなのであろうか。すると、金色が後ろを見ていた。俺も後ろを見てみると、車に巨大な蜘蛛が乗っていた。
「うわああああああ」
俺の叫びにつられて、黒川と永新が、飛びのこうとしてシートベルトに阻まれていた。
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