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「何だ、この、座布団型蜘蛛は!」
大き目の座布団程の蜘蛛であった。手足も太く、俺の腕程もある。
「六助様!」
やはり、これが六助であったか。巨大な蜘蛛だ。しかし、足の数を数えてみると、六本しかない。足が六本ならば、虫ではないのか。
「……六助様は、昆虫なの?」
「いえ、二本は戦闘で失ってしまわれて。かなりの大怪我だったらしく、生えて来ないのです」
六本になってから、六助と名前が付けられたらしい。
「……六助様は、皆の憧れです」
俺は六助に憧れてはいないので、どうか近寄らないで欲しい。でも、六助が走っている車の屋根を移動してきた。そして、窓から顔を出してくる。俺が怖がると、六助は一旦は顔を引っ込めるが、又顔を出して驚かせてきた。
「……もしかして、遊ばれている」
「六助様は、人間の子供が好きなのです。表情が豊かで、笑うでしょう」
そういう面では、俺は子供ではないし、表情は少ない。ましてや、笑顔はそうそう出ない。
俺が六助に脅かされて、見ないように下を向くと、窓が叩かれていた。
「六助様が、少しだけ窓を開けて欲しいと言っています」
窓から入ってくるのではないのか。俺が、固まっていると、金色が俺の皮膚を噛んでいた。六助は、蜘蛛の憧れの存在ということを忘れていた。それに、仲間が邪険にされるというのは、とても悔しい事だろう。
ほんの少し窓を掛けると、六助は、細い棒のようなものを差し入れてきた。俺が手に持ってみると、それは蜘蛛の足で、驚いて落としそうになってしまった。
「蜘蛛笛だそうです。六助様の足で出来ていて、吹くと蜘蛛の助けが得られます」
紐が付いていて、首から掛けられるようになっていた。しかし、形が蜘蛛の足で、これを首から掛けるのは勇気がいるだろう。
「守人様を助けるのではなく、預けた雌に危険が迫ったら吹いて欲しいということです」
確かに、俺を守ると言われれば返すが、雌の為と言われると持っているしかない。
「首から掛けるの?」
「守人様はやんちゃですから、壊しそうですね。私が預かっていましょう」
そこで、金色に渡すと、俺の中に消えていった。
結局、蜘蛛笛は俺が持っているのと同じではないのか。
笛が俺に取り込まれたのを確認すると、六助が糸を飛ばして、空に飛んで行ってしまった。
「あの大きさで飛ぶと、目立ちそうだね……」
「六助様は、気配を消せますので大丈夫ですよ」
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