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料理が並んだが、里琴は食べようとはしなかった。しかも、又、眠ったように静かになっていた。貧血だけではなく、やはり心の病なのではないのか。それに、俺が話しを聞いたところで、どうにもならない。
俺が兎屋の姿を探していると、窓の外で西崎が六助と散歩をしていた。庭の隅では、兎屋が誰かと歩いていて、俺の視線に気付いたのか手を振っていた。
あの巨大な蜘蛛を見ても、皆、驚かないというのが、やはり壱樹村なのであろう。
「里琴さん、蜘蛛は平気ですか?」
「え……蜘蛛ですか。嫌いです」
里琴は眠ったように呟いていた。
「金色、ごめん。里琴さんの中身を見て来て」
「はい」
蜘蛛が嫌いというので、金色に隠れて移動して貰った。そして、金色は里琴の体に消えて行った。暫くすると、金色が戻ってきて、俺の手の平に乗った。
「過労気味ですが、その他は、目立った病気はありません」
では、貧血ではなく、気力がなくなっているのだろう。
俺が李下を見ると、李下は頷いて里琴の横に座ると、食事のサポートを始める。
「里琴さん、これはお芋です。小さいので、一口で食べられますよ」
これでは介護ではないだろうか。暫く、李下が食べさせていると、里琴が正気になってきた。
「ごめんなさい。時々、意識が無くなってしまって……」
「何を見ていましたか?」
意識が無くなっても、里琴の眼は何かを追っていた。それに、何かに激しく怯えていた。もしかすると、怖くなると里琴の意識が無くなるのではないのか。意識が遠のく前に、里琴の手が震えているのが、気になる。
「……黒いものが横切ってゆきます」
「では、部屋に結界を張りましょう」
俺は、部屋に簡単な結界を張る。結界の光に照らされると、里琴の中身が暗く見えていた。闇まではいかないが、暗い何かとリンクしている。
リンクがあるということは、里琴は人であり、×ではない。里琴自身に、自覚の無い能力があるというのではないだろう。
「このリンクは、どこに繋がっているのでしょう」
「良かった……見えるのですね。兎屋様が、もしかしたら守人様ならば見えるのではと言っていましたので、我慢できずに頼んでしまい、呼んで頂きました」
里琴が、儚げに笑っていた。でも、少し明るさがあった。
「このリンクは、過去なのです」
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