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「里琴さんの思考と、リンクが連動していました。でも、リンクの先が見えなかった」
俺はリンクの先を見ているが、八重樫はリンクの先は見てはいけないと言っていた。これは、井戸のようなもので、映っているのは底にいる自分の姿だと、八重樫はいう。暗闇に映る自分を見ていると、自分が誰なのか分からなくなるらしい。映っている方が、自分に思えてくる。
俺は光とのリンクなので、リンクの先を見ていると影が消えて、自分の存在を失い消滅する気分になる。だから、本当に光で消滅する×の気持ちは良く分かる。影が無くなると、自分の存在が確かにあるという自信が無くなるのだ。
俺が里琴の横に座ると、里琴が目を見開いて俺を見ていた。
「少し、触れてもいいですか?その、リンクのある腹部がいいのですけど」
「どうぞ」
里琴が、俺の手を掴んで自分の腹に乗せてくれた。すると、里琴の腹は冷たくなっていた。これは、冬の水道水くらいには冷たい。
「切丸。オロチで、リンクを追っていって」
オロチでリンクを追ってみると、里琴が横になったまま、子守歌をうたっていた。そのメロディーは聞いたことがないが、眠くなるというよりも、高音に頭骸骨が共鳴してくる。
それは、里琴が五歳の時であった。
母親は、体の具合がいい時は、里琴の手を持って散歩に行った。里琴の母親は自然が好きで、優しい笑顔の持ち主であった。里琴に沢山の花の名前を教え、雲の種類を教えた。里琴は、母親が大好きであった。
そして、里琴の母親が体調を崩してゆき、ベッドから出られなくなると、里琴は庭の花を摘んでは届けていた。
その日は、母親はいくら呼んでも、目を開かなかった。母親の苦しそうに息をするだけで、返事もできなくなっていた。
そこで、里琴は思いだした。隣の家の住人が、母親によくスープを持ってきてくれた。そのスープを飲むと、母親は数日ほど元気になった。里琴は、隣に行って、又スープを貰おうと走った。
「いや、思いだしてはダメ……」
里琴が目を閉じながら、涙を流していた。これは、母親が死んだ哀しみではなく、見てしまった後悔に近い気がする。涙でも、流すと痛いような血の涙に近かった。
「李下さん、刀を用意していてください」
李下が居合い抜きの構えを取ったので、その先を見てみた。
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