第二章 千年時計 二

5/9
前へ
/210ページ
次へ
 玄関は静かで、やや薄暗くなっていた。そこで電気のスイッチを入れると、玄関から続く廊下の奥までもが見えた。まず、玄関から体育館に続く通路が、飛び散った血で真っ赤になっていた。 「ここで、暴走していると判断したね。×を喰うのは、血など飛ばさない。丸飲みだからね」  ×は殺すのではなく、丸飲みで喰うのが基本となっていた。だから、周囲に血が飛び散る事はない。 「驚く程に血が飛び散っていて、これでは犯人も血を被っただろうね」  天井にも床にも、血が飛び散っていた。天井にかかる血の量が激しいので、ここでは立って歩いている状態で、首を切り落とされた。そして、集中的に血が固まっている数から推測すると、五人がここで死んでいた。  そこで体育館に行くと、そこには鍵が掛かっていて、中はきれいなままであった。バスケットを指導していた先生は、多美と一緒に校舎を巡っていた。  この先生は、バスケットの練習が終わったと連絡を受けて、鍵を掛けに体育館に来ていた。体育館の中を見ると、ステージの上のピアノが開きっぱなしだった。そこで、閉じる為に中に入り、戸締りを確認していた。そこで、今度は電気のスイッチの故障で、電気が消せなくなり、他の先生を呼んだ。  ここで呼ばれた先生は美術教師で、学校で絵を描いていた。キャンバスが大きすぎて、家で描けないので、学校で描いていると皆も知っていた。美術室は、離れにあったので、校舎を通過せずに、中庭を通過して体育館に来ていた。  この二人の先生は、電気には詳しくなく、体育館のブレーカーを落として電気を消す事にした。そこまでに、三十分近く、あれこれ試してしまったらしい。  そこで、鍵を返しに職員室に向かおうとすると、この血塗れの廊下に遭遇する。そこで、警察と市役所に電話を掛けた。市役所は、×の暴走だと判断し、専門家である多美に声をかけた。 「血の上には足跡があった。その足跡は、体育館に出ていた。この先生二人は、体育館の裏のブレーカーにいたから助かったのだろうね」  足跡は、運動靴のようなもので、二十三センチであった。  多美達は、犯人は校舎の中から来たのだと、各教室をまわってみた。すると、二階にあった六年生の教室が、窓にまで血飛沫がかかっていた。他に、音楽室も血塗れになっていた。  ここでは、吹奏楽を練習している子供と、担任がいた。担任が直江津で、姿が見えなかった。
/210ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加